知っているようで知らない。誤解している人も多いと思われる地方自治のしくみ。議会とは?議員とは?町長とは?行政とは?正しく理解していると自信を持って言えるだろうか。熟知している人も多いと思うが、この場を借りて改めて学びなおしてもらえれば幸いだ。
私は町会議員として、ささやかながら町政=地方自治に関わっている。近年の政治に対する有権者の無関心傾向や、下がる一方の投票率などには少なからず懸念を抱き続けている。
それと同時に住民の地方自治に対する誤解があまりにも多いことにも驚いた。実際にびっくりするような誤解を堂々と主張する、あまりに多くの住民と出会ってきた。この経験が、舌足らずながら筆を執ってみようと思い立った理由である。
まず手始めに「議員」について考える。地方議員(例えば松川町の議員)とは何者なのか。あなたはどんな印象を持っているだろうか。恥ずかしながら私は40歳になるまで全くと言って良いほど、地方議員について無知であり関心もなかった。
そんな私でも人並みにニュースを聞く。国会がどうした、与党の議員がどうした、総理がどうした、くらいのことは理解しているつもりだった。しかしこれが誤解の元なのかもしれない。
「議員」という単語を聞いて多くの人が思い浮かべるのは「国会議員」ではないだろうか。私たちは国会議員に関するニュース報道を日々耳にする。メディア露出も多く、どうしても印象に残る。国会議員の特徴や性質(そしてその隠然たる力のようなもの)はなんとなくわかる。県会議員や町会議員は対象の範囲が国か県か町か違うくらいで、中身は国会議員とあまり変わらないだろう。私はそんなふうにしか考えていなかった。
先に結論を言えば、国会議員と県や町の議員は全くと言っていいくらい性質が異なる。分かりやすく説明するために、「性質」という単語に変えて以下では「隠然たる力」と表現する。これから回りくどい説明をする。この面倒くささが地方議員に対する誤解の原因の一つだと思う。退屈と思われるだろうが、どうかお付き合いいただきたい。
国の議員は持っていて、県や町の議員は持っていない「隠然たる力」とはなんだろうか。それにはまず「権力」とは何かを正しく理解する必要がある。あなたは「権力」と聞いて何を、誰をイメージするだろうか。権力とはズバリ「住民(国民)に何かを強制させ従わせる力」であると言っても過言ではない。
他人が持っているものが欲しくて盗みを働いたとする。それは刑法という法律に抵触する。権力者は権力(=警察組織に命じて動かす力)を使って犯人を捕まえようとする。そのためには暴力を使ってもよい。そうやって犯人という、いち住民を拘束して行動(逃亡)の自由を奪い取る。「権力」はこれを強制する力があるのだ。
何も犯罪に限ったことではない。私たちは75歳になれば誰もが「後期高齢者医療保険」に加入する。権力者は法律に従って、対象の全国民を保険に加入させる強制力を持つ。私たちに加入「したくない」という自由はない。権力はその「加入したくない自由」を拒絶し、停止させる力がある。
インフラ整備や福祉、教育も同様だ。全住民がひとり残らず全員賛成で「異論がまったく無い」インフラ整備も教育も福祉もあり得ない。住民の意見は多種多様、いろいろあるのが当たり前だ。時間とともに考えが変化するのもごく自然なことだ。しかし行政は最後は何かを「決定」して断行する。結果的には反対意見や異論を「認めない・受け入れない」で、自らの決定に住民を「従わせる」力を持つのだ。
もうすでにお分かりだと思う。法の範囲内で対象の住民に何らかを「強制する」こと、「従わせる」ことが権力である。それを実行するのが「行政」と呼ばれる仕組みや人たちだ。権力をもとに「政」(まつりごと)を「行」う組織体である。省庁や役所はその代表例だ。
住民の行動を強制し従わせるのが権力。その実行組織が行政。その組織のトップが「最高権力者」である。私たちが普段使う「政治」というコトバは、この「最高権力者」や「行政機関」を指すことがほとんどだろう。
国の最高権力者は「首相」である。都道府県は「知事」だ。そして市町村、例えば松川町は「町長」が最高権力者だ。最高権力者は何でもできる万能の神のような存在に見えるかもしれない。実際に、権力者が自分の都合の良いように権力を濫用、悪用すれば独善政治、独裁者は簡単に生まれる。
そこで私たち人類は権力者の暴走を止める方法を発明した。行政は誰かがやらないといけない。だから権力者に行政の権力は与えるが、「(1)法律を作ったり変えたりすること」「(2)集めた税金をいくらでも自由に使うこと」この2つのチカラを権力者から取り上げた。そしてこのチカラは複数人で構成する「議会」という組織に持たせた。
行政の頂点にいる「権力者」の暴走を防ぎ、けん制する役割を「議会」に持たせる。この発明はそう遠くない昔から世界中で広く使われている。(1)法律の制定や改廃(2)税金の使い道をチェックし承認や否決、が「議会」の役割だ。日本でも「国会」「県議会」「町議会」全てに共通している。究極のところ「議会」の仕事はこの二つと言っても過言ではない。
それが「県の議会」「市町村の議会」の実態だ。しかし「国の議会」だけ、もう一つ重要な役割がある。これが大きな誤解のもとになっていると思う。それは行政のトップ=「最高権力者」を決めるのは誰なのか?という特徴だ。
(はこべ2023年7月号掲載。次号へつづく)