地方自治を学びなおす③ ― 地方議員について

 地方自治、いうなれば町の政治(=町政)は、私たちの生活に最も身近であるはずなのに、知らないこと・誤解していることが多い。前回まででは地方議員(例えば松川町の議員)に対する誤解がどうやって生まれるのかについて解説を試みた。


それにはまず「権力」を正しく理解する必要がある。権力とは「行政」を執行できるチカラのことだ。わかりやすく言えば、「住民(国民)に何かを従わせる・強制する」ことができる、ということだ。



住民から見れば、最高権力者はこの国では「首相」「知事」「町長」の3人だけだ。議会に権力は「ない」。権力者を牽制する機能を持つに過ぎない。



しかし国会議員だけは特殊な状況にある。彼らは最高権力者(首相)を決める一票を持っている。よって権力者(首相や各行政機関)と国会議員は特殊な関係が生まれやすい。



その影響力、隠然たるチカラを遠慮なく行使する国会議員も少なくないだろう。それを期待してアテにしている地元住民も多いと思う。というところまで前回説明した。


 


察しの良い方はすでにお気づきだと思う。行政に隠然たるチカラを持つ国会議員。「きっと地方議員も同じだろう」。これが最大の誤解だ。前回までに説明した通り首相と異なり、県知事や町長は住民が直接選挙で決める。地方議員は一切関与できない。



知事、町長といった「地方の権力者」は、選挙に関して議員に恩義も「借り」もないのが普通だ。当然、地方議員には「私の一票で」あなたを知事や町長に選んでやった、という事実も「貸し」ない。



それは健全といえば健全な本来の姿だ。行政の最高権力を持ち、それを行使する権限がある知事や町長。その権力の暴走や独善を防ぎ、税金を正しく使うようにチェックし、場合によっては予算否決という方法で権力行使をストップできる議会。



ふたつのチカラが程よい緊張感をもって分散しているこの状態を「二元代表制」という。これが現在の地方議会の姿だ。国会議員とは明らかに持っている「チカラ」が違うのだ。



しかし、かつての私も含め、多くの住民はそんなことは知らないし、関心もないのが大多数ではなかろうか。「町会議員」「県会議員」なんて日常の生活でほとんど接点がない、そもそも誰が議員なのかすら知らない、という人も多いと思う。



町会議員の知り合いがいる、県会議員と顔見知りだ、という人も少なからずいるだろう。しかし前に述べたように「国会議員」と同じような「隠然たるチカラ」を地方議員も「持っている」と誤解している人の多さに驚く。



その誤解は次のような批判を招いてしまう。「あの議員に〇〇を頼んだのにやってくれない」。「あの議員は〇〇を建設すると公言したのにやらない」。



住民にはいろいろな要望がある。道路を立派に舗装してほしい、橋を架けてほしい、カーブミラーや信号がほしい、給食費を無料にしてほしい、企業を誘致して雇用を増やしてほしい、などなど。



みなさまもご存知の通り、これを実行するのは行政の仕事であり、実行すると判断するのは知事や町長といった「行政の最高権力者」である。議員では「ない」。であるはずなのに、「議員個人」に要望すればよいと考える住民も多い。



住民の要望を託された(=頼まれた)議員ができることは、せいぜい関連する議案が行政から出たときに、住民の要望を自分の質問にうまく織り交ぜる、もしくは一般質問で取り扱うテーマにする、ぐらいである。議員にできるのはあくまで「質疑」であり、行政機関に「実行させる」機能もチカラも議員にはない。



住民の要望を聞き入れてくれる議員を、仮に議会の過半数以上集めた(=多数派になった)としよう。しかし議会に多数決のチカラがあっても「〇〇という事業を新たにやりなさい」と、行政に「住民の要望」を強制的に実行要求する事はできない。予算を伴う事業を計画する権利は、法律によって知事や町長といった「行政トップ」にしか許されていないのだ。



例外があるのは承知であえて断言したい。有権者が議員個人に何かを要望して即効性を期待するのはあまり意味をなさない。町長や行政機関へ直接要望したほうがずっと早い。「給食費を無料にします」などと公言する議員は信用しないほうが良いだろう。それは本来行政(町長)の決断と仕事であり、議員個人にできるはずもないし、その権限もない。



議員が公言するならば、「行政が『給食費を無料にしたい』という議案を出したら、私は賛成します」。というのが本来の姿だ。より現実味を帯びるなら「私と同じように賛成する議員仲間を『過半数』集めます」。と主張すべきだ。



私たちが地方議員を選挙で決めるとき、その点を注意して見てほしいと願う。あなたの住む極めて限定された地域に、地方議員が何かを「してくれる」ことは、理屈上あり得ない。だからそれを期待したり要望することは、もともと筋違いなのである。



私たち有権者は「議員は町長に対して口利きができる」、その結果「議員は地元に恩恵をもたらす存在」と誤解する。議員も議員で、本来できるはずのない「行政がすべき仕事」を、あたかも自分が実現させるかのように公言する。こうやって選ばれる地方議員には何も期待できない(してはいけない)と思う。誤解したまま投票する、あなたにも責任の一端はあるのかもしれない。

はこべ2023年10月号掲載。次号に続く)