地方自治を学びなおす⑥ ― 議員と「地元」について

 私たちの生活に最も身近な政治、例えば町政。意外と知らないコト・誤解しているコトは多い。この連載は改めて見つめなおそうという趣旨だ。


まずは地方議員、いうなれば町会議員へのよくある誤解を解説した。国会議員と混同しているのか「町会議員には行政に『口利き』するチカラ」があるという誤解。実のところ今の時代、そんな口利きはほぼ不可能と言える。



誤解の原因は他にもあるだろう。例えば過去の経緯だ。とある町村の話だが、ずっと昔には「地元」議員とは「地元への利益誘導」に奔走するのが仕事、というような時代もあったようだ。その時代に恩恵を受けた体験がある有権者は、今でも議員は地元に利益を運んでくれるだろうと誤解する。



時代は移り変わり、議員の口利き行為や地元へのあからさまな利益誘導は、今では禁じられていると言っても過言ではない。そういった変化を知らない有権者はまだまだ一定数いるようである。現在では地元の要望は区や自治会から唱えたほうが、ずっと早いし効果的だ。



そもそも町会議員は、地元に縛られずに「町全体の視点」で議案を審議するのが当然の原則だ。地元への利益誘導の口利きが禁じられている今は、ある意味では健全な議員本来の姿になりつつあるのかもしれない。



何がなんでも「おらが地域」から議員を出す、それが投票判断の最優先事項だという考えの有権者も一定数は存在するだろう。それを否定するつもりはない。投票の判断は人それぞれ自由だ。



しかしそういった有権者が持つ議員活動についての基礎的な認識は正しいとは言えない、という実態もある。それが町政や地方議会の衰退の一因かもしれない。というところまで前回説明した。




さて私たち有権者は、どうやって地方議員を選べば良いのだろうか。もちろん前提として投票は自由行動だから、最終的には自身の判断基準で投票すればよいことだ。



しかしこれまでこの連載で説明してきた通り、私たち有権者が「地方議員の仕事」に対する「正しい認識」を持っていないと、せっかくの投票が無意味なものになりかねない。「間違った認識」で「間違った期待」をもって投票すれば「間違った議員」が生まれ「間違った議員活動」をするだろう。



繰り返し述べるが、自分が住む地域への利益誘導を目的として、わざわざ「地元」から議員を選ぶ行為はどうかと思う。今の時代、議員個人に「利益誘導」するチカラはない。そしてその仕組みもない。今は議員個人が下手に行政へ口利き行為を行うと「しっかり証拠を取られ」「厳しく非難され」「場合によっては罰せられる」という、恐ろしいほど割に合わない行動なのだ。松川町でも例外ではない。



地元への利益誘導に奔走する議員個人など、とっくの昔に消滅している。だから有権者が「地元利益誘導」という視点で投票しても、議員はあなたに何もしてくれないだろう。というより禁止されているので、できるはずがない。あなたの「おらが地元を優先して」という思いは、全く届かないし、そもそもそれは議員の仕事ではない。



数ある候補者を比較して、能力や経験、実績や信条などを比べてみたが甲乙つけがたい。そうであれば顔見知りの地元の候補者を支援しよう、という判断なら理解できる。主権者の大事な1票は、納得できるまで吟味して行使して欲しいと願う。



もしあなたが議員の選択に最優先で「地元」要素を求める、どうしても「地元」でなければ困る、というなら、その「理由」を掘り下げたほうが良いだろう。概ね以下の3点に集約されると思われる。



(1)「おらが地元にインフラ、ハコモノ、公営サービスを誘致してもらえる」



これは何度も説明したように、今の時代ではほぼ不可能だ。この理由で投票することは無意味に近いと考えたほうが良い。



(2)「おらが地元の産業や地理的特徴、住民の事情をよく知っている」



これもよく言われるようだ。しかしその先に何を期待しているのだろうか。結局は地元への利益誘導が本音ではないだろうか。それは何度も言うように不可能だ。

「地元の詳しい情報を持ち、行政へさまざまな要望を伝える」のは、今の時代は「自治会」や「区」の仕事となっている。もはや議員の出る幕はない。



(3)「顔見知りだから、なんとなく安心できる。人柄を知っている」



これもよく聞く理由だ。あなたのその「気持ち」は分からないでもない。しかし議員選挙を「ともだち選び、友人づくり」のレベルで考えているなら、生まれた議員もしょせんあなたの「ともだち」程度だ。議員としての仕事ぶりを期待してはいけない。



わたしのこれまでの調査を踏まえ経験則も合わせて出した結論は、上記のとおりだ。要するに「地元という理由」だけで議員を選ぶなら、議会が「レベルダウン」するのは仕方ない。「投票して当選させたあなたにも責任の一端はある」ということだ。



やはり有権者は「現代の議員・議会の仕事」を正しく把握、理解すべきだ。そうしないと選びようがない。仮にあなたが「農業委員会」という制度を知らない、なんの団体なのか、何をしているのか、さっぱりわからない、もしくは誤解しているとしよう。そんなあなたに投票権が与えられているとしよう。さてあなたは「農業委員」にふさわしい「最適任者」を投票して選択できるのだろうか。


はこべ3月号に掲載。次号へ続く)